アメリカだより18:身近になった中東問題 (2006年8月)
皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。
いよいよ7月から最終学年である3年目の研修医となりました。
1学年上級の先輩達は卒業後それぞれチーフレジデントとして残る者あり、フェローとして教える側として残る者あり、多くはグループプラクティスの一員として開業をし、またある日本人医師は他の州立大学の大学教員となりました。皆自分の道を歩み始めたのです。
同時に7月から新研修医が入ってきました。皆戸惑いながらも着実に成長しているのがたったの2ヶ月で分かります。
僕自身も、より指導者としての責任が増え、インターンを指導しながら自分も成長しているのだなと実感させられます。
さて、話は変わりますが、最近のトップニュースといえばイスラエルとレバノンの戦闘ですね。
今日は医学とは関係なく、ものの見方について。
日本にいた時は正直言うと中東のニュースにはあまり興味がありませんでした。しかし渡米後それは大きく変化しました。
と言うのも研修医には中東から来る者がかなり多いからです。
同期にもレバノン、シリア出身の者がいますし、後輩にもレバノン出身が2人います。また、先月ローテートした精神科ではフェローがレバノン出身でした。そうなると中東問題は他人事ではありません。
ある女性研修医は、実家がイスラエルの爆撃のあった場所からわずか数ブロックしか離れていないと嘆き、真っ赤な目をしていました。一晩中電話をかけていたが繋がらなかったということです。その後家族の無事が確認できたのは不幸中の幸いでした。
ある研修医の家族は攻撃を受けない北部に避難したとのこと。国のインフラが30年前に逆戻りだと言っていました。
またあるフェローはアメリカで結婚し、自国であるレバノンで挙式を上げる準備のために奥様が一時期帰国中に戦闘が始まってしまい、出国できなくなってしまったと青い顔をしていました。2週間後にようやく陸路でヨルダンに避難できたと安心していました。
当然アメリカ人も含め皆武力衝突は反対です。ただ興味深いのはレバノン(ヒズボラーではないです、念のため)への同情的な意見は良く聞かれるのですが、イスラエルへの非難はほとんど聞きません。
ピッツバーグはもともとイスラエル人が多い街で、ピッツバーグ大学医療センターにも多くのイスラエル系アメリカ人医師が働いています。米国ならではの配慮なのかもしれません。
中東問題は複雑で、第三者からするとどちらの言い分も正しいような気もしてきます…。
山前浩一郎
家庭医療研修プログラム一期上級の卒業パーティー。指導教官全員が壇上で出し物をしています。