皆さんこんにちは。
今回の話はナイトフロート。なんだかコーヒーフロートみたいな名前ですがところがどっこい、一番しんどい研修です。フロートとはフワフワ漂う、っていう意味ですがナイトフロートは夜間病院中を行ったり来たり漂っている(本当は駆け巡っているのですが)人、という意味なんです。
アメリカだより17:二度としたくないナイトフロート(2006年6月)
皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。
この原稿を書いているのは6月の中旬です。早いもので米国で研修を開始して2年が過ぎました。あと1年で家庭医療の研修は終了。その後皆開業もしくは、フェローとなりさらなる専門分野のトレーニングを行います。昨日最後の当直を終えました。3年になると当直が無くなるのでかなり体力的に楽になります。
今回は日本の研修システムには無いローテーションのお話しをします。それはナイトフロートと言い、夜間だけ病院中を駆け回るローテーションです。
アメリカでは多くの研修病院がこのシステムを取り入れているのですが、日本では馴染みがありません。私の研修している病院では当直は夕方の5時から夜9時半までです。4時間半の間にひたすらERから入院治療が必要な患者さんを入院させます。その後はナイトフロートに申し送りをして帰宅するのです。
午後9時半から翌朝の8時まではナイトフロートが入院、病棟患者の管理、外来患者さんからの電話相談、全てを引き受けます。もちろん、全て1人で行います。病院には自分以外家庭医療の医師はいません。
当然、昼夜逆転しますし、週に2回午前中の外来がありますから、皆から最も嫌われているローテーションです。ひどい時になりますと、30分間に4人の入院患者をERから渡され、その間に病棟患者さんが急変、といった事が起こるのです。とても一人で裁ききれないと逃げたくなりますが、やるしかないのです。
4週間の研修期間が終わると皆疲れ切ってしまうのは当然のことでしょう。
2年目の研修医にここまで責任の重い仕事をさせることは日本ではあり得ないと思います。しかし、ここアメリカではフェローを含めて研修を卒業すると皆開業です。徐々に現実の社会に慣れる様トレーニングされているのだと実感させられます。ここにアメリカの研修の醍醐味があります。
学年が上がるに連れ到達目標も上げられ、卒業と同時に一定レベルの医師が排出される。この当たり前の職業訓練が日本では非常に困難な状況なのです。
さて、7月からは日本からも新研修医がやってきます。充実した1年になるよう頑張ります。
山前浩一郎
研修していたシェイディーサイド病院の中庭。よく見てください、桜が咲いていますし、灯籠もあります。そうなんです、私が研修していた病院の中庭は日本庭園なんです。