やまさきファミリークリニック 院長ブログ

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アメリカ便り25 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

アメリカ便り25:アメリカ老人ホーム事情(2007年10月)

 

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。

今回はアメリカの老人ホームの話をしたいと思います。
ハワイはアメリカの中でも高齢化が進んでいる州のひとつです。ただ日本と同様に入居希望者に対して老人ホームのベッドは不足しているのが現状です。
そこで、老人ホームが過剰な他の州(アメリカ本土!)の老人ホームに入居する人もでてきています。

ではどのような人が老人ホームに入居できるのでしょう。
老人ホームには大きく分けて2種類あります。
短期リハビリや点滴治療など、それなりの治療が必要な方が一時的に入居するもの、そして特に高度なケアは必要の無い長期に入居するものです。
前者はアメリカの高齢者用の医療保険で最大90日までカバーされます。しかし現実には多くの方はその後家に帰ることができません。引き続き長期療養が必要な方がほとんどです。そこで長期療養の老人ホームに入るのですが、これは先ほどの保険ではカバーされません。寝ているだけで月に80万円位する老人ホームの費用を、低所得者用の保険が適用になるまで自腹で払わなくてはならないのです。
こうしてアメリカのご老人たちは老人ホームに入ることによって財産を失ってしまうのです。もちろん、高額な費用を自分の懐から払い続けることのできる裕福な人々もいますが少数派です。

老人ホーム以外にも、独立して生活を営むことはできるご老人用の施設に生活援助ホームなるものもあります。ホテルの一室を買い取るようなもので、掃除洗濯のサービスはもちろん、食堂での食事の提供、看護師の常駐、定期的な医師の往診が受けることができる施設です。
こうした施設は特に持病を抱えている方々にとっては自宅に住むよりも安心だという声を聞きます。ただし保険ではカバーされないのですべて自費になります。豪華さを売りにしている施設が多く、自宅を売却してまでも引っ越すに値する魅力的な施設が多いです。

こうして書いてみるとどうもアメリカはお金がないとろくな老人ホームに入れないのではないかと思われるかもしれませんが、良い面もあります。それは法律で我々老年科の医師がすべきことがきめ細かく決まっているために、高額な老人ホームに入ることのできない患者さんも含めてすべての患者さんに対して適切な医療が提供されていることです。

アメリカに老年医学が広まるまで、老人ホームは転倒、辱創、体重低下、脱水、感染症など多くの問題を抱えていました。現在は老年医学の発展とともにこうした問題はかなり改善されてきています。
もちろん、老年医学の専門を取得しなくても内科や家庭医療の専門を持っていれば老人ホームの患者さんを診察することはできます。しかし私が4ヶ月の研修で学んだことは、家庭医療の3年の研修では決して学ばなかったことばかりです。老年医学専門医がご老人のケアに優位であることは明らかです。

生活援助ホームにお住まいのとある日本語が堪能な日系アメリカ人のご婦人が私に言いました。
日本ではこんな素敵な施設は無いでしょう?是非あなたが作って、と。
今の日本の高齢者医療は変革の真っ只中にあります。これから何が日本に必要なのか、よく考慮し、将来皆様のお役に立てることができたらどんなに良いだろうと思案している最中です。

山前浩一郎

 

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