やまさきファミリークリニック 院長ブログ

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アメリカ便り26 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

アメリカ便り26:退役軍人医療センターの進歩的なシステム(2007年11月)

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。

今回はアメリカのに特有で日本には無い医療システムを紹介しようと思います。
日本にはたくさんの国立病院が各地に存在しており地域の拠点病院となっていますが、アメリカには基本的に国立病院は軍関係の病院しかありません。

ご存知のように米国は軍事大国なので国防省の他に退役軍人(VA)省が存在し米軍に従事し引退した人のための特別なサービスがなされています。
医療はその柱の一つで患者さんは高齢者用の公的医療保険であるメディケアのほかにVAの医療保険に入ることができ、他の健康保険に比較すると格段に有利な内容になっています。場合によってはすべての医療サービスが無料となる場合もめずらしくありません。

VAはもちろん老人ホームを全米で展開しておりその質はかなり高いものとなっています。
さて、そのVA老人ホームでは普通とはちょっと違う患者さんたちがいます。基本的に皆元軍人なので多くの第二次世界大戦を経験した人が老人ホームの主な患者さんです。
それ以外に短期リハビリの患者さんの中には朝鮮戦争、ベトナム戦争で負傷した傷を未だに引きずっている人が多いです。

ハワイという場所柄、日系アメリカ人の退役軍人が多いのも私の研修した老人ホームの特徴でしょう。
第二次世界大戦当時日系人はアメリカ人でありながら収容キャンプに入れられるという屈辱的な経験をしています。そのような時代背景の中米軍に従事し、ヨーロッパの激戦地で活躍することによってアメリカにおける日系人の地位向上に多大な影響をもたらしたのが彼ら退役軍人なのです。
彼らは物静かで多くを語りませんが、家族皆に愛され尊敬されています。

ベトナム戦争や朝鮮戦争の退役軍人は第二次世界大戦の退役軍人と違い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)をわずらっている方が多く、身体的負傷などから生活環境がかなり厳しい方が多いです。

また、私が感銘を受けたのは国のサポートの厚さです。以前少しお話したメディケア、メディケイドというアメリカの公的医療保険と違いVA独自の医療保険は本当に医者の私たちでさえもうらやましくなる内容です。
他の一般的な医療保険との決定的な違いは予算の違いから生じるのでしょう。
皮肉なことに戦争があると税金が増えてVAには潤沢な資金が入ります。
そして中央一括管理も高品質な医療の提供に関係しています。たとえば使える薬が限られるという欠点もありますが、国が薬を一括大量購入し安価に提供しています。

日本は医薬分離が進みました。
アメリカでは以前から医薬は分離されていますが、特定の医療サービスにおいては医薬を分離しないことで低コストを実現しています。
また、中央では全てのVA医療センターの成績を比較し、どうすれば患者さんへのケアが向上するか研究し、良い点はすべての医療センターで実行するのです。
VAシステムに将来の日本における老年医療のヒントがあるのではないかと思った次第です。

山前浩一郎

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ワイキキビーチの夕日。仕事が終わってからワイキキで夕日を見ながら食事をすると、ちょっとした観光気分が味わえました。

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