やまさきファミリークリニック 院長ブログ

尼崎市のやまさきファミリークリニック – 内科・老年内科・糖尿病内科・小児科・アンチエイジング・渡航前ワクチン/英文診断書・治験

アメリカ便り8 米国臨床留学 家庭医療@ピッツバーグ大学

アメリカだより8:ICUは人生劇場(2005年1月)

 

皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。

楽しかったホリデーシーズンが過ぎ、とうとう巡ってきました、ICUが。
ICUは集中治療室の頭文字を取ったもので、病院中の一番重症な患者さんが転送されてきます。その患者さんたちを一手に引き受けているのが8人のICUのレジデントです。一年目のインターン(僕がそうです)と2年目もしくは3年目のレジデントが1人ずつ組み、全部で4組のチームで構成されており、毎日順番に当直をしていきます。自分の当直日にICUに運ばれた患者さんをその後も継続して治療しますので、当直の日はドキドキです。沢山入院してしまうと、翌日からものすごく忙しくなってしまうので、ボケベルが鳴らないことを皆祈っています。

コンディションC(急に意識レベルが低下したり、酸素飽和度が低下した状態)やコンディションA(心停止、呼吸停止)が館内放送されると当直チームは走って現場に向かい、その患者さんをICUに転送します。4チームで構成されているので当直は4日に一度、さらに当直の前日が休みなので4日に一度は完全にフリーになるのですが、当直の日は本当に眠れませんでした。
中には1日で11人もICUに入院になりぶつぶつ文句を言っている研修医もいましたが、気持ちはよく分かります。当然重症患者さんが多い分お亡くなりになる方も多いのですが、日本との死に対する温度差を感じることも多々ありました。

心肺停止の状態でヘリコプターで転送されてきた64才の男性は脳波検査で無酸素脳症と診断されました。それはつまり不可逆的なダメージが脳に残り、回復の見込みは無いことを意味します。ICUの医師達は脳波の結果が出ると早々に家族を呼び、回復の見込みがないため今積極的にしている治療を中止し、痛み止めだけの治療に変えるよう薦めます。もちろんそうすることによって数日以内に患者さんは亡くなることは分かっています。患者さんの家族にしてみれば数日前まで元気にしていた人が急変して気持ちの整理も出来ていないので何とか延命するように我々に頼みますが、僕には家族の気持ちがよく分かりました。
日本では心臓が動いている間は何とか延命させようと努力することが多いと思います。回診の後、個人的に家族と話しをしました。家族がどれほどその患者さんを愛し、大切にしているかが痛いほど伝わってきました。
結局私は上司と話し合いその患者さんには出来るだけの治療を続ける方針としたのです。3週間に渡るICUでの治療の甲斐があり、その患者さんは意識は戻らなかったものの一般病棟に移ることが出来ました。

日米の死生観の違いを感じつつも日々の業務に忙殺された一ヶ月でした。それでは皆さんまた来月お話ししましょう。

山前浩一郎

 

やまさきファミリークリニック
尼崎市のやまさきファミリークリニック
内科・老年内科・糖尿病内科・小児科・アンチエイジング・渡航前ワクチン/英文診断書・治験
TEL : 06-6430-0567
〒660-0861 尼崎市御園町54番地カーム尼崎3F 阪神尼崎駅南へ徒歩1分

コメントは受け付けていません。