やまさきファミリークリニック 院長ブログ

尼崎市のやまさきファミリークリニック – 内科・老年内科・糖尿病内科・小児科・アンチエイジング・渡航前ワクチン/英文診断書・治験

アメリカ便り28 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学 自分らしく最後まで生きる

こんにちは。

今回は久々にハワイでの老年内科研修について書こうと思います。
もう研修終了後6年も経ちます。光陰矢のごとしですね。

ハワイ大学の老年医学プログラムでは、病棟、外来、老人ホーム、在郷軍人病院、在宅等、考えうるすべてのシチュエーションでトレーニングをしてきました。

ハワイ大学でとにかく叩きこまれたのは、ご高齢の患者さんたちが自分らしく余生を過ごすために、私達老年内科医が努力するということでした。

高齢になると生活に変化が生じます。
身体能力が低下した場合は独居が困難になるため老人ホームに入る必要があるかもしれません。
認知症があると周辺症状のために性格が変わってしまったり、グループホームに入らなければならないかもしれません。
また、持病の悪化や思わぬ病気で長期間入院を余儀なくされる方もいるでしょう。
人生の最後をそうした施設で過ごさざるをえない時、医療という面からそうした方々を支えるということは非常に大切な意味を持ちます。

ホノルルにある退役軍人用の老人ホームで勤務している時にある一人の忘れられない患者さんを担当しました。その方はOさんといい、沖縄出身とすぐに分かる名字の日系2世の方です。
第二次世界大戦当時、アメリカ人であるにもかかわらず日系ということだけで非常に苦労された日系アメリカ人の若者たちは、あえてヨーロッパの激しい戦地に赴き活躍することで、自分たちのアメリカ人としてのアイデンティティーを確立しました。Oさんもそんな誇り高き日系人の一人です。ご家族たちも本当にOさんを尊敬していることが会話からひしひし伝わってきます。
そんなOさんは末期の認知症のため寝たきりで会話もできず、かろうじて食事を全介助で摂取しているような状態でした。

Oさんに対するご家族からの要望は至ってシンプルなものでした。”何も治療しない、自然に任せる”。
これは元気であった頃からのOさんのご希望だそうです。
口を開けない時は無理に食べさせない、誤嚥性肺炎を疑っても抗生剤の点滴をしない、私達は単にOさんの状態を毎日チェックするだけでした。
もちろん私が担当している間も何回か発熱し、肺炎疑いの時がありましたが、酸素吸入のみで点滴は行いませんでした。
しかしご家族はそれが本人の望みだから、と特に心配をしている様子はなく、暖かくOさんを見守っていらっしゃいました。

”自分らしく最後まで生きる。”
私が老年内科医として大切にしていることです。

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