アメリカだより11:病院外の連携(2005年6月)
皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。
今回は少し変わった、しかしとても為になる研修をしたのでお話しします。
研修は病院外の様々な施設を訪問し、患者さんがどのようなサービスを受けているか自分で確かめるものでした。
それらの施設には高齢者のためのデイケア、自宅で治療を続ける方のためのホームケア、在宅ホスピスなど日本でも目にするものから、エイズタスクフォースと言って経済的に苦しいエイズ患者さんに無料で薬を提供することから始まり、仕事の斡旋、エイズの予防のための教育活動など考えられる全てのサービスを行っている米国ならではの施設もありました。
暴行の被害にあった女性を専門にケアする施設は24時間、365日いつでも担当者と連絡が取れるようになっていましたし、経済的に子供に十分な食事を与えることが難しい家庭に無料で食料を提供するサービス、地域のホームレスの人々をいかに自立させるか検討する教会のグループ、肉親を失った子供の心のケアを無料で行っている施設など普段外来をしている時には目にすることが出来ない多くのサービスに直接触れることが出来たのです。
おそらく、日本でも同じようなサービスを受けることは出来るのかもしれません。しかし8年余り日本で働いていたにも関わらず、こういった病院外のサービスに関しては全く無知であった自分に反省すると共に、本来であれば受けられるサービスを受けていない方々が日本には多く存在しているのではないかという危惧を抱きました。
私が現在勤務している家庭医療センターにはこういった施設、サービスのパンフレットが患者さんの目にとまりやすい所に置いてありますし、ソーシャルワーカーに皆気軽に相談しています。中には、給料日が来週で今週はお金がないから抗生物質を無料で提供してくれといってくる方もいます。来週支払えばいいのにと心では思いながら、出来るだけ希望に添うようにするのですが、手厚いサービスに依存してしまう人がかなりいるのも事実です。
研修を通じて痛感したのは、日本でも医療機関以外で行われているサービスがもっと一般の人々に認知されなければならないということでした。これは帰国後の一つの課題となるでしょう。来月は渡米して一年経ち感じることを述べてみようと思います。
山前浩一郎