やまさきファミリークリニック 院長ブログ

尼崎市のやまさきファミリークリニック – 内科・老年内科・糖尿病内科・小児科・アンチエイジング・渡航前ワクチン/英文診断書・治験

美容にも認知症にも有効なグルタチオンの話

2014年10月15日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

皆さんこんにちは。

今日は古くて新しい、グルタチオンの効果についてお話しようと思います。

グルタチオンは非常に強力な抗酸化作用を持つことが知られています。肝臓の解毒作用を助け、更には細胞の老化を防ぐため、様々な用途で使用されてきました。

日本ではグルタチオンが製剤として承認されていますので、サプリとして購入することはできません。古くから肝機能異常の治療などに使用されています。

しかし、紫外線による酸化ストレスに最も影響される皮膚細胞に効果があることから、近年は美容目的でグルタチオンを点滴している方も多いのではないでしょうか?

さて、院長はアメリカアンチエイジング学会の認定医を持っていますが、同時にアメリカ老年医学の専門医も持っており、尼崎市で初の老年内科を標榜しております。
アメリカではグルタチオンをパーキンソン病の治療に取り入れているドクターがいるほどですが、パーキンソン症状が特徴的なレビー小体型認知症でお困りの方にグルタチオンが有効であったのでご紹介します。

先日ご家族に付き添われていらっしゃった患者さんです。典型的なレビー小体型認知症の方ですが、他院にてアルツハイマー型認知症として治療されていました。勉強熱心なお孫さんがレビー小体型認知症ではないかと当院にいらっしゃいました。

詳細な問診と診察でレビー小体型認知症で間違いなかったため、グルタチオン1400mg(7本)とニコリンを点滴。15分後にはもともとすり足歩行であった患者さんの歩幅が広がり、歩行が改善しました。

わざわざ遠くから来院してくださったご家族も大喜びで、私はもちろん、当院スタッフも認知症治療をもっと頑張る決意を新たにしたのでした。

当院ではコウノメソッドを取り入れて認知症の治療に取り組んでいます。認知症が治る病気になるのはまだまだ先のことだとは思いますが、コウノメソッドは患者さんも、介護するご家族も笑顔になれる治療法です。皆様のお役に少しでも立てる様努力し続けます。

当院で使用しているビタミンCについて

2014年10月8日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

皆さん、こんにちは。

今回は当院でアンチエイジングのメニューにある、ビタミンCについてのお話です。

ご存じの方も多いと思いますが、美肌、美白にビタミンCは欠かせない存在です。
ビタミンCは細胞の老化の大敵、酸化ストレスを強力に防いでくれる、とってもありがたいビタミンなのです。
紫外線によるメラニン色素の沈着を防ぐので美白効果はもとより、その強い抗酸化作用で炎症を抑えてくれることも期待できますのでニキビでお悩みの方にも朗報ですね。

また、シワが気になる方にもビタミンCは強い味方です。皮下でのコラーゲン生成を促してくれます。
コラーゲンたっぷりの化粧品や健康食品をよく見かけますが、実は塗ったり食べたりしても決して皮下には届きません。体に入るときに分解されてしまうからです。皮膚にハリを与えて若返らせるには体の中からコラーゲンを作る必要があるんですね。

さらにはビタミンCはアンチエイジング効果以外に、免疫力を高める作用もありますので風邪を引いた時にビタミンCを摂取すると早く治ると言われています。
最近注目されているのが抗癌効果。高濃度のビタミンC(50~100g!)を点滴することで、がん患者さんの生活の質を高め、抗癌剤の効果を増強するという論文が出ています。

では、当院で使用しているビタミンCをご紹介しましょう。

当院ではアイルランドのマイラン社から直接ビタミンCを冷蔵輸入しています。実はこのマイラン社のビタミンCには防腐剤が添加されていないのです。

国内で発売されているビタミンCは2gが最大量で、当然防腐剤が入っています。10g、つまり5本使用する程度であればこの防腐剤も問題ありませんが、25gの点滴となると防腐剤が多すぎです。薬のアレルギーはこの防腐剤に対するものの場合も少なくないため、当院では10gを超えるビタミンCを点滴するときはマイラン社製のビタミンCしか使用しません。

また、ビタミンCは冷蔵していないと効果が減弱してしまいます。工場出荷から当院の冷蔵庫に入るまで、きっちりと温度管理がされていますのでご安心ください。

皆様がいつまでも若々しく生活をエンジョイできるようサポートしてゆきたいと思います。ご興味ある方はぜひご相談ください。

マイラン社ビタミンC

当医院のアンチエイジングメニュー(点滴療法)はこちらから

 

アメリカ便り27(最終回) 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

2014年9月14日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

みなさん、こんにちは。
以前書きましたとおり、アメリカ便りは中途半端ですが第27回で終了です。
まだまだ書きたいことはあったのですが、この原稿をお渡ししていた病院が閉院になったためです。

書きためていたものはここまでですが、これからは思い出しながら書き足していきたいと思います。
次回のブログからはやまさきファミリークリニックのお知らせなど書いてゆく予定です。

 

アメリカ便り27:自分の最期は自分が決める

 

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。
今回は事前指示と生前遺言について述べたいと思います。

仕事柄私の患者さんは皆お年寄りなのですが、患者さんを診察する上で重要なことのひとつに事前指示と生前遺言の確認があります。
何だそれ?と思われる方が多いと思いますので少し説明させていただきます。

1つ目の事前指示とは英語でアドヴァンス・ディレクティブと言い、自分が意思決定能力を失った際に誰が自分の代わりに意思決定をするのか、いわゆる後見人をあらかじめ指定しておくものです。後見人には医療に関する後見人と財産に関する後見人があり、私たち医師が確認しなければならないのはもちろん医療に関することです。

2つ目の生前遺言は英語でリヴィング・ウィルと言い、自分が命の瀬戸際に立ったとき、どこまで延命治療をするのかを元気なうちに決めておくことです。
アメリカでは1960年代の後半から、自分の最後を医療者にどう委ねるかを自分で決めることが重要なのではないかという議論がなされ、1980年代の中盤にアメリカ統一法として制定されてから今日に至るまで全50州で州法として制定されています。
このような法整備がなされた背景には尊厳死の理念があります。回復する見込みの無い、昏睡状態の患者さんを闇雲に機械で生かすことが果たして人間らしいことなのか、自分らしく自分の望むような死に方ができないのか、そんな疑問が発端だったのです。

例えば80才のご老人が心肺停止で発見され、救命救急に運ばれたとします。もし、事前指示と生前遺言が無ければ私たち医師は何でもします。心臓マッサージを開始し、挿管(喉から肺に管を入れること)をして人工呼吸器につなぎ、できるだけ多くの点滴をつないで強心薬、昇圧薬、抗不整脈薬等を注射します。
運良く心臓が動き出しても不整脈が出ていれば今度は電気ショックで不整脈を止めます。何とか、心拍が確保されると集中治療室に運ばれますが、いったい退院までどのくらいかかるのでしょう?
骨粗鬆症のある高齢者に心臓マッサージすれば肋骨が折れます。治療が長引くほど寝たきりになるます。意識が戻ったとしてもそれまでの生活には戻れないでしょう。胃に管を入れなければ食事もできなくなります。
そうしたことを患者さんと話し合うことで患者さんは万が一のことが自分に起きた場合、どう医療者が対処するか決めるのです。
ハワイ州では医師がカルテに記載さえしていればそれは法的に有効です。もし、救命救急に心肺停止で運ばれた80歳の患者さんが生前遺言を持っていて、延命治療を拒否していることが分かっていた場合、静かに死亡宣告がなされ、患者さんは体に傷をつけることなく、ご本人の希望通りに自然に任せた人生の最後を迎えるのです。

重要なのは、生前遺言はいつでも変更が可能ですし、延命治療をしないということは一切の治療をしないということではないのです。
肺炎になったら肺炎の治療はしますし、心筋梗塞になれば治療はします。
あくまでも回復の見込みが無い時だけの話です。

自分の最後は自分で決める。当たり前のようで実はまだ日本では当たり前ではありません。
日本の医師たちは患者さん本人の意思よりも家族の意思を尊重する傾向にあります。後々の問題を嫌うからでしょう。

アメリカでは仮に患者さんの意思に従い延命をしなかった場合、後から家族がなぜ延命しなかった!と訴訟しても医師は法で守られているのです。
日本には財産を管理する後見人制度はありますが、健康、医療に関するこのような法整備が遅れています。
法整備に向けた動きはあるようなので見守っていきたいと思います。

これを読まれている方も是非元気なうちに自分の意思をご家族、主治医にお話してください。
あなたらしく人生を最後まで過ごすために。

山前浩一郎

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ホノルルの自宅で遭遇したかたつむり。当時使っていたスマホ(パーム!)と大きさを比べてください。
これ以外にもトノサマガエルの王様みたいなのや、ヤモリもよく遊びに来ました。

アメリカ便り26 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

2014年9月5日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り26:退役軍人医療センターの進歩的なシステム(2007年11月)

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。

今回はアメリカのに特有で日本には無い医療システムを紹介しようと思います。
日本にはたくさんの国立病院が各地に存在しており地域の拠点病院となっていますが、アメリカには基本的に国立病院は軍関係の病院しかありません。

ご存知のように米国は軍事大国なので国防省の他に退役軍人(VA)省が存在し米軍に従事し引退した人のための特別なサービスがなされています。
医療はその柱の一つで患者さんは高齢者用の公的医療保険であるメディケアのほかにVAの医療保険に入ることができ、他の健康保険に比較すると格段に有利な内容になっています。場合によってはすべての医療サービスが無料となる場合もめずらしくありません。

VAはもちろん老人ホームを全米で展開しておりその質はかなり高いものとなっています。
さて、そのVA老人ホームでは普通とはちょっと違う患者さんたちがいます。基本的に皆元軍人なので多くの第二次世界大戦を経験した人が老人ホームの主な患者さんです。
それ以外に短期リハビリの患者さんの中には朝鮮戦争、ベトナム戦争で負傷した傷を未だに引きずっている人が多いです。

ハワイという場所柄、日系アメリカ人の退役軍人が多いのも私の研修した老人ホームの特徴でしょう。
第二次世界大戦当時日系人はアメリカ人でありながら収容キャンプに入れられるという屈辱的な経験をしています。そのような時代背景の中米軍に従事し、ヨーロッパの激戦地で活躍することによってアメリカにおける日系人の地位向上に多大な影響をもたらしたのが彼ら退役軍人なのです。
彼らは物静かで多くを語りませんが、家族皆に愛され尊敬されています。

ベトナム戦争や朝鮮戦争の退役軍人は第二次世界大戦の退役軍人と違い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)をわずらっている方が多く、身体的負傷などから生活環境がかなり厳しい方が多いです。

また、私が感銘を受けたのは国のサポートの厚さです。以前少しお話したメディケア、メディケイドというアメリカの公的医療保険と違いVA独自の医療保険は本当に医者の私たちでさえもうらやましくなる内容です。
他の一般的な医療保険との決定的な違いは予算の違いから生じるのでしょう。
皮肉なことに戦争があると税金が増えてVAには潤沢な資金が入ります。
そして中央一括管理も高品質な医療の提供に関係しています。たとえば使える薬が限られるという欠点もありますが、国が薬を一括大量購入し安価に提供しています。

日本は医薬分離が進みました。
アメリカでは以前から医薬は分離されていますが、特定の医療サービスにおいては医薬を分離しないことで低コストを実現しています。
また、中央では全てのVA医療センターの成績を比較し、どうすれば患者さんへのケアが向上するか研究し、良い点はすべての医療センターで実行するのです。
VAシステムに将来の日本における老年医療のヒントがあるのではないかと思った次第です。

山前浩一郎

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ワイキキビーチの夕日。仕事が終わってからワイキキで夕日を見ながら食事をすると、ちょっとした観光気分が味わえました。

アメリカ便り25 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

2014年9月2日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り25:アメリカ老人ホーム事情(2007年10月)

 

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。

今回はアメリカの老人ホームの話をしたいと思います。
ハワイはアメリカの中でも高齢化が進んでいる州のひとつです。ただ日本と同様に入居希望者に対して老人ホームのベッドは不足しているのが現状です。
そこで、老人ホームが過剰な他の州(アメリカ本土!)の老人ホームに入居する人もでてきています。

ではどのような人が老人ホームに入居できるのでしょう。
老人ホームには大きく分けて2種類あります。
短期リハビリや点滴治療など、それなりの治療が必要な方が一時的に入居するもの、そして特に高度なケアは必要の無い長期に入居するものです。
前者はアメリカの高齢者用の医療保険で最大90日までカバーされます。しかし現実には多くの方はその後家に帰ることができません。引き続き長期療養が必要な方がほとんどです。そこで長期療養の老人ホームに入るのですが、これは先ほどの保険ではカバーされません。寝ているだけで月に80万円位する老人ホームの費用を、低所得者用の保険が適用になるまで自腹で払わなくてはならないのです。
こうしてアメリカのご老人たちは老人ホームに入ることによって財産を失ってしまうのです。もちろん、高額な費用を自分の懐から払い続けることのできる裕福な人々もいますが少数派です。

老人ホーム以外にも、独立して生活を営むことはできるご老人用の施設に生活援助ホームなるものもあります。ホテルの一室を買い取るようなもので、掃除洗濯のサービスはもちろん、食堂での食事の提供、看護師の常駐、定期的な医師の往診が受けることができる施設です。
こうした施設は特に持病を抱えている方々にとっては自宅に住むよりも安心だという声を聞きます。ただし保険ではカバーされないのですべて自費になります。豪華さを売りにしている施設が多く、自宅を売却してまでも引っ越すに値する魅力的な施設が多いです。

こうして書いてみるとどうもアメリカはお金がないとろくな老人ホームに入れないのではないかと思われるかもしれませんが、良い面もあります。それは法律で我々老年科の医師がすべきことがきめ細かく決まっているために、高額な老人ホームに入ることのできない患者さんも含めてすべての患者さんに対して適切な医療が提供されていることです。

アメリカに老年医学が広まるまで、老人ホームは転倒、辱創、体重低下、脱水、感染症など多くの問題を抱えていました。現在は老年医学の発展とともにこうした問題はかなり改善されてきています。
もちろん、老年医学の専門を取得しなくても内科や家庭医療の専門を持っていれば老人ホームの患者さんを診察することはできます。しかし私が4ヶ月の研修で学んだことは、家庭医療の3年の研修では決して学ばなかったことばかりです。老年医学専門医がご老人のケアに優位であることは明らかです。

生活援助ホームにお住まいのとある日本語が堪能な日系アメリカ人のご婦人が私に言いました。
日本ではこんな素敵な施設は無いでしょう?是非あなたが作って、と。
今の日本の高齢者医療は変革の真っ只中にあります。これから何が日本に必要なのか、よく考慮し、将来皆様のお役に立てることができたらどんなに良いだろうと思案している最中です。

山前浩一郎

 

アメリカ便り24 米国臨床留学 老年医学@ハワイ大学

2014年8月28日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

皆さん、こんにちは。
この回から舞台をハワイのホノルルに移します。
残念ながらこのエッセイは27回で終わってしまいますがあと少しお付き合いお願いします。

 

アメリカ便り24:ホノルル引越し完了(2007年8月)

 

皆さん、こんにちは。ホノルルの山前です。

3年過ごしたピッツバーグを離れホノルルに引っ越してきたのが7週間前。
現在の家に移ったのが3週間前です。まだまだ部屋の中は段ボールが山積みですが、ようやく新居も我が家としての居心地良さを感じられる様になりました。

以前皆さんに説明させて頂きましたが、ピッツバーグでの家庭医療の研修が6月に無事終了し、現在は7月からハワイ大学で老年医学の後期研修をしています。
日本の医科大学を卒業して今年で丸12年、すでに13年目にも関わらず未だに研修をしているのは何とものんびりしているようですが、おそらくこれが最後の研修になるはずです。
1年もしくは2年の短期ではありますが、ハワイでの医療、ハワイで暮らすということについて皆様にお伝えできたらいいなと思っています。

さて、私が物心ついてから初めてハワイに遊びに来たのは17年前でした(2歳の時に来たらしいのですが覚えていません…)。その時の記憶といえばビーチで遊んだことくらいしか思い出せませんが、こんなところで生活したいなと思ったことは確かです。
それから一度もハワイに来ることなく今回の引越しになったので実際生活するとどうなるかは想像に難しく、引越し前は物価がニューヨークの次いで高いだの、公立学校の教育レベルが低いだの否定的な意見しか目にとまりませんでした。

ホノルルに引越してみるとワイキキに滞在する観光とは違い人々の生活が見えてきます。確かに物価はピッツバーグよりかなり高い印象です。公立小学校も数校を除くと”行かせてはならない”と先輩達に警告されました。しかしそんなネガティブな面を忘れさせてくれる何かがここ、ホノルルには有るのです。

第一に私は今ハワイではマイノリティーでは有りません。というのも日系人の人口が中国系に次いで2番目多いのです。本土ではマジョリティーの白人はハワイでは下から2番目。アフリカ系アメリカ人は1%に過ぎず人口分布には登場しません。全体の6割がアジア系アメリカ人なのです。

ですので一緒に働く医師の苗字もほとんどが日本人の名字です。名前はさすがにアメリカの名前ですが。日系人がマジョリティーであるお陰で日本の文化が色濃く存在しており、ハワイ独特の分化とアメリカの文化、さらには日本の文化がほどよくミックスされています。

ワイキキに滞在しているだけではおそらく目にすることがないと思いますが、7月には盆ダンスが至るところで開催されていましたし、公立小学校では週に1回日本語の授業があります。また、放課後に日本語学校に通う子供も少なくありません。いわゆるアメリカ人(白人)も日本に対する知識をかなり持っており好意的です。本当にここがアメリカかと思われる位に、日本人であることが至って普通に感じられる場所なのです。

もちろん、ホノルルを出ると白人が多い地域や、ハワイ人(といっても純粋なハワイ人は1万人くらいしかいないそうです)が多い地域もありますが、アジア系の人々が多いだけで安堵感を感じずにはいられません。

ということで毎日アロハシャツを着ながらとても快適にリラックスして仕事をしています。運が良ければ2年滞在し、最後の年は老人ホームの医学管理等について学び、将来に生かそうと考えています。今後ともよろしくお願い致します。

山前浩一郎

UH-GeriFellows2007 mini

ハワイ大学の同期。

アメリカ便り23 米国臨床留学 家庭医療@ピッツバーグ大学

2014年8月26日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り23:家庭医療研修を終えて考える日本の医療(2006年6月)

 

皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。

とうとう今回でピッツバーグからのアメリカ便りは終わりです。次回からはホノルルからお届けします。
卒業を目前にした現在、最後のチーフレジデントをしています。
最後くらいは楽なローテーションで引越しに準備をかけたかったのですが、とても忙しく、友人たちに手伝ってもらって引越し準備を進めています。

3年前に渡米してから卒業まで、今から振り返るとあっという間でした。最初の1年は英語との戦いだったと言えるでしょう。もちろん今でも英語には超えられない壁がありますが、以前よりは壁は低くなってきています。これ以上英語は上達しなくても何とかなると開き直ることができたとも言えるかもしれません。

2年目は一気に責任が増し、忙しい年でした。日本での経験があるからこそ何とか乗り越えましたが、私の本当の卒後2年目(10年前!)ではとても出来なかったでしょう。

3年目は卒業を前にローテーションも自由に組め、当直も無く、公私ともに充実した年でした。アメリカという国と患者さんたちには本当に感謝しています。いくら感謝しても感謝しきれないくらいです。私たちのような外国出身で外国の医学校を卒業した医師達に教育の機会を与え、専門職に就かせてくれくれるのですから。一時、アメリカ以外での医業活動の可能性について調べたことがありますが、この国ほど外国人に門戸を開いている国は有りませんでした(日本は外国の医学校出身の医師にかなり門戸の狭い国の一つです)。

この3年間、常に現在学んでいる事をいかに日本で活用できるかを考えていました。
しかし結局3年間で分かったことは、最高の医療をするにはお金がかかると言うことです。

一人一人の患者さんに十分時間を割き、病気になった時ばかりでなく、健康を維持する事に重きを置くアメリカの家庭医療を日本ではそのままコピーすることが残念ながら困難なのです。

日本では医師に対する報酬が相対的に低いために開業医は自分の生活のためにかなりの人数の患者さんを診ないといけません。必然的に診察時間は短くなり医療サービスの質を保つのは容易なことではありません。
では逆にアメリカ式に1日20人程度の患者さんを完全予約制で診ていると日本では赤字経営となってしまいます。患者さんからは医師になかなか会えないと不平が出るでしょう。
もちろんアメリカにもこの異常なほどの高額な医療費のために財産を失う人もいます。また保険すら買えない人が4500万人以上もいます。つまり、世の中に最高の医療システムは存在しないということなのです。

厚生労働省は1970年代に各県一医学部政策を採り、医師不足を解消しようとしました。
90年代になると医師過剰時代と呼ばれ、医学部の定員を減らし続けました。そして今急に医師不足が問題になっています。
国はこれから何年かは医師(医学部生)を増やす予定です。しかし同時に医療費は削減しようとしているのです。よりよい医療を国民が求めるのなら、国民が医療にお金がかかることを許容し、医療費削減という矛盾した政策を方向転換させる必要があるのではないかと考えています。

今回はピッツバーグからは最後になりますので日頃考えていることを脈絡もなく書いてみました。
次回の便りはハワイからになりますので皆様により楽しんで読んで頂ける原稿をお届け出来るのではないかと期待しております。

山前浩一郎

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卒業式で同級生と。僕はハワイ大学に行くのでレイを掛けてもらいました。

アメリカ便り22 米国臨床留学 家庭医療@ピッツバーグ大学

2014年8月23日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り22:研修終了前のラストスパート

 

皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。

早いものでこの原稿を書いているのは4月の中旬です。が、ピッツバーグはまだ雪が降っています。
2週間前に春の陽気を超え、初夏の日差しがやってきた時には私の病院の前庭にある桜の木は満開になったのですが、数日でやってきた冬の再来のために、早々に花を散らしてしまいました。

さて、そんな中途半端な気候ではありますが、私たち3年目の研修医らは皆卒業後の進路が決まり、気分はもう晴れやかです。

ただし、アメリカの家庭医療の研修を終了するにはいくつかの基準があり、その基準をクリアするために皆ラストスパートをしています。その一つに3年間で診る外来患者さんの数があります。
私が日本にいた時、後期研修医として派遣されたある病院での外来では、午前中に30人の患者さんを診ていました。1時間に10人の割合で診ていたのです。時にはそれ以上の時もありました。おそらくこのエッセイを読まれている皆様も医師の診察は5分前後である事が多いのではないでしょうか。
アメリカでは1人の患者さんに研修医、開業医問わず、最低15分時間を割いています。私たち研修医はその時間内にカルテをタイプし、指導医にプレゼンテーションしなければならないのでかなり忙しくなり、結局平均すると1時間に2人から3人診るのがやっととなります。半日に10人も診るともうくたくたです。

そのような環境の中で、3年間の研修中に診なければならない患者数は1650人です。1年目はより指導に時間がかかり、外来数も少ないので年間約70人しか診ません。2年目は私の場合700人の患者さんを診ました。と言うことで3年目にはおよそ900人の患者さんを診ることになります。
前回の書いたとおり、一ヶ月間日本に滞在していましたので4月初旬の段階で私が卒業までに診なければならない患者数は310人でした。1ヶ月に103人、1週間に26人。半日の外来で多くて約8-9人診ていますが悪天候などでキャンセルが出る事もしばしばなので現在週に5コマの外来をしています。こうなるともう毎日クリニックに貼り付けになるので、研修をしていると言うよりも開業しているようです。

患者さん達もそろそろ主治医が去るのを知っていますので、別れを惜しんでくれる人も数多くいます。中には泣き出してしまう人もいました。
初めは英語も辿々しく、やっていけるか心配でしたが3年で患者さんとも信頼関係を築くことが出来、良くここまで来たと自分でも驚きです。ある郵便局員のアフリカ系患者さんは私が主治医になったことで日本に興味を持ち、2回も(!)日本を訪れ、毎年行きたいと言ってくださいました。

今後は患者さんとの別れ方の講義もありますし、私が担当しているすべての患者さんに対してグッバイレターを書きます。まだまだ最後まで忙しい研修生活ですが満足感と感謝で一杯でもあります。次回はピッツバーグから最後の便りになります。

山前浩一郎

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シェイディーサイド病院の桜

アメリカ便り20 米国臨床留学 家庭医療@ピッツバーグ大学

2014年8月19日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り20:ハワイ大学に決定(2006年12月)

皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。

前回来年の就職活動について書きました。今回は結果報告をさせて頂きます。
ハワイ大学の老年医学科に進むことになりました。
寒いピッツバーグ(と言っても今年はかなり暖かく、雪もまだ数回しか降っていません)から常夏のホノルルへ移動です。

前回のエッセイではピッツバーグから車で引越しできる範囲でプログラムを探していると書きましたが、ハワイ大学にも応募しておきました。その他にはメイヨークリニック、ミシガン大学、ピッツバーグ大学、ケースウェスタンリザーブ大学と、どこも名高い所ばかりです。

日本からレジデンシー(研修)に応募した時には100カ所以上のプログラムに自分の履歴書を添えて手紙を出し、採用の可能性を探りました。中でも可能性のありそうな所に絞り20カ所くらいに応募し(応募するのにお金がかかるので絞らざるを得ませんでした)、面接に呼ばれたのは3カ所のみ。
どうにかこうにか第一志望のピッツバーグ大への採用が確定した時には本当に嬉しかったことを今でも昨日のように覚えています。おもしろいことに、一旦アメリカのレジデンシーに入ってしまうと後はどこの国の出身かというのは余り関係なくなってしまいます。あれほど苦労したのが嘘のように、メイヨーを含め4カ所から面接に呼んで頂き、最終的にはハワイ大に決めました。

ハワイ大の老年医学科は全米でも一番大きいプログラムの一つで、フェロー(後期研修医)が12人もいます。これだけフェローを揃えられるのは国から補助がかなり出ていると言うことになります。
実際ハワイ大学はホノルルハートスタディーという臨床研究で世界的に非常に価値のある成果を上げ、補助金が豊富なようです。
フェローが多いと言うことはそれを教える教員も相当数いると言うことになり、教育レクチャーはどこにも引けを取らない内容とボリュームです。とは言え、何と言っても昔からハワイに住んでみたいと思っていた僕は一番初めに採用の通知を頂いたハワイ大との契約書にサインをし、他のプログラムはキャンセルしました。

これで僕のクラスで卒業後の進路が決まったのは3人です。もうすぐ決まりそうなのが1人、フェローの採用待ちが3人、のんびりしているのが2人と言った具合です。
そろそろ卒業が見えてきて皆将来に向けて抱負を語っています。しかし、来年のポジションが決まったからと言ってのんびりしてはいられません。卒業後には家庭医療の専門医試験があるのでそろそろ重い腰を上げて勉強を開始することにします。

一月の中旬から4週間一時帰国します。その間、色々な施設を見学したり、もちろん新八柱台病院に出入りしたりするので、これを読んで頂いているどなたかにお会いするかもしれません。その時にはどうぞよろしくお願いします。

山前浩一郎

 

アメリカ便り19 米国臨床留学 家庭医療@ピッツバーグ大学

2014年8月18日 から Yamasaki.K | 0件のコメント

アメリカ便り19:進路決定の時期(2006年10月)

 

皆さん、こんにちは。ピッツバーグの山前です。

今回は私が現在している就職活動について述べてみようと思います。
ご存じのように来年の6月に家庭医療の研修は卒業です。その後は日本に帰るか更に研修を続けるか決めなければなりません。
交換留学ビザでは研修終了後は母国に戻らなければならない取り決めになっています。
もともと新八柱台病院で働いている時から老人ホームで患者さんを診る機会を与えられ老年医療に興味があったため、老年医学のフェローシップ(後期研修)を探すことにしました。日本では老年医学がまだ一般的でなく確立されているとは言えない状態ですので、帰国した際に少しでも日本の医療に貢献できるのではないかという期待もしています。

さて、家庭医療の研修終了後に進むことの出来るフェローシップは内科と比べて限られています。
代表的なものには老年医学以外に、スポーツ医学、ファカルティーディベロップメントが挙げられます。スポーツ医学は特に人気で、フェローシップの競争率は非常に高いです。また、ファカルティーディベロップメントは日本に同等の研修が無いためカタカナで書きましたが、要は将来の指導者を育成するプログラムです。そのプログラムの性質上、アメリカ政府から援助を受けているプログラムがほとんどですのでいずれ自国に戻る外国人医師には敷居が高いことが多いです。ただしピッツバーグ大学医療センターでは、これまでの優秀な日本人を含む外国人医師の努力のお陰で毎年数人の外国人医師がフェローシップに進んでいます。
そして、老年医学。老人専門の科であることから華々しさが無いためか、競争率は高くありません。中には研修の始まる直前まで研修医を募集しているところもあります。

と言うことで、何をするにも腰が重い私はようやく応募の準備にかかったところです。応募するのは今いるピッツバーグから車で引越しできるところを中心に選んでいます。これまでお世話になった先生方から推薦状を快く書いて頂けましたので、後は面接に呼んでもらうのを待つのみです。
私のクラスメートは例年よりもフェローシップに進む者が多いため、来年の職が決まっている者はまだ1人しかいません。もう数ヶ月で私も含め来年の動向が見えてくるでしょう。

辛かったインターンを乗り越え、協力し合いながら研修してきた仲間の卒後の進路はやはり気になるため良く話題になります。何か決まりましたらこの紙面上でお知らせさせて頂きます。

山前浩一郎

Jack-o'-Lantern

お手製ハロウィーン用のジャック・オー・ランタン。